YAML形式で書かれたデータファイルと、YAMLもしくはテキストファイル形式で書かれたスタイルから履歴書PDFファイルを作成するRubyスクリプトです。
このスクリプトで作成される履歴書のフォーマットは、JIS Z 8303『帳票の設計基準』に掲載されていた「履歴書」の様式に則ったものでした。しかし経済産業省に履歴書の性別欄を無くすよう要望があり、経済産業省からその要望を受け取った一般財団法人日本規格協会は、もともと履歴書の様式は「例」であったとして、JIS Z 8303から履歴書の様式例を削除しました。もともとJIS Z 8303は帳票の寸法を定めるもので、個々の様式(フォーマット)を定めるものではなかったのですが、あくまで例として掲載されていた「履歴書」の様式が、「JIS規格のフォーマットである」と誤解されて広まったものだったようです。すなわち、JIS規格の履歴書というものはもともと存在せず、JISに記載されていた履歴書フォーマットも削除された今、このスクリプトの作るフォーマットに公的な意味はありません。ご利用の際は上記についてご承知おきください。
ikasamさんが、Dockerを使う実行環境を作ってくださっています。Docker環境がある方はいろいろインストールしなくてもgit clone
してdocker-compose up
するだけでPDFが作成されるので便利です。
このリポジトリを利用して、ローカルで運用するためには、Rubyの実行環境と以下のライブラリ、フォントが必要になります。
- Prawn
- IAPexフォント (本リポジトリに同封)
PrawnはBundlerで管理しているため、以下のコマンドでインストールしてください。
bundle config path vendor/bundle
bundle config set --local without 'documentation'
bundle install
Prawnから日本語を出力するためにIPAexフォントを使っており、本リポジトリに以下のように同封しています。利用にあたってはIPAフォントライセンスv1.0への同意が必要です。
├── fonts
│ ├── IPA_Font_License_Agreement_v1.0.txt
│ ├── Readme_IPAexfont00401.txt
│ ├── ipaexg.ttf
│ └── ipaexm.ttf
└── make_cv.rb
以下のように、-i
に続けてデータファイル、-s
に続けてスタイルファイル、-o
に続けて出力ファイルを指定します。省略した場合のデフォルトはそれぞれdata.yaml
、style.txt
、output.pdf
です。
$ ruby make_cv -h
Usage: make_cv [options]
-i, --input [datafile]
-s, --style [stylefile]
-o, --output [output]
YAML形式のデータファイル(例:data.yaml
)とスタイルファイル(例:style.txt
)を用意し、スクリプトを以下のように実行します。
ruby make_cv.rb -i data.yaml -s style.txt -o output.pdf
添付のサンプルでは以下のような出力が得られます。
また、スタイルファイルを変えることで、同じデータファイルから異なる出力を得られます。以下はアカデミックポスト向けのスタイルファイルacademic.txt
を使った場合です。
ruby make_cv.rb -i data.yaml -s academic.txt -o academic.pdf
データはYAML形式で用意します。
以下はサンプルのdata.yaml
の一部です。
# 名前等
date: 2018年 6月 5日現在
name_kana: りれきしょ かくたろう
name: 履歴書 書太郎
birth_day: 1543年1月31日 (満 73 歳)
gender: 男
cell_phone: 090-1234-5678
email: [email protected]
photo: photo.jpg
# 住所
address_kana: とうきょうとちよだくちよだ
address: 東京都千代田区千代田1-1-1
address_zip: 100-0001
tel: 0120-000-XXX
fax: 0120-111-XXX
# 連絡先
address_kana2: ほっかいどう わっかないし そうやみさき
address2: 北海道稚内市宗谷岬
address_zip2: 098-6758
tel2: 0120-222-XXX
fax2: 0120-333-XXX
例えば、写真がphoto.jpg
として用意してある場合、
photo: photo.jpg
とすれば写真が貼られます。もし写真ファイルを指定しなかった場合、例えば
# photo: photo.jpg
としてコメントアウトすると、写真部分は
のような出力になります。
履歴書のスタイルファイルは、一行に一要素ずつ記述していきます。例えばacademic.txt
は以下のような内容になっています。
# ヘッダー
string,5mm,247mm,履 歴 書,font_size=14,font_face=gothic
string,110mm,245mm,$date,font_size=9
# 住所・連絡先等
box,145mm,204mm,30mm,40mm,line_style=dashed
string,148mm,240mm,写真を貼る位置,font_size=9
string,147mm,233mm,1. 縦36〜40 mm,font_size=8
string,150mm,230mm,横24〜30 mm,font_size=8
string,147mm,227mm,2. 本人単身胸から上,font_size=8
string,147mm,224mm,3. 裏面にのりづけ,font_size=8
string,147mm,221mm,4. 裏面に氏名記入,font_size=8
一行目の
string,5mm,247mm,履 歴 書,font_size=14,font_face=gothic
は、(5mm,247mm)の位置に「履 歴 書」という文字を、フォントサイズ14で、フォントはゴシックで記述する命令です。このうち必須なのは座標と文字列ですが、その後にオプションとしてフォントサイズやフォントの指定ができます。
次の行の
string,110mm,245mm,$date,font_size=9
も同様に(110mm, 245mm)の位置に文字列を出力する命令ですが、出力する文字列が$date
となっています。これは、データファイルのdata
要素に置換されます。今、データファイルは
date: 2018年 6月 5日現在
とあるので、
string,110mm,245mm,$date,font_size=9
は
string,110mm,245mm,2018年 6月 5日現在,font_size=9
に展開されます。
テキスト形式の命令リストは以下の通りです。
命令 | フォーマット | 説明 |
---|---|---|
string | string, x, y, value[,font options] | (x,y)に文字列valueを出力 |
line | line, x, y, dx, dy[,line options] | (x,y)から(x+dx, y+dy)に線を描画 |
box | box,x,y,width,height[,line options] | (x,y)に指定された幅と高さのボックスを描画 |
photo | photo, x, y, width, height | 指定位置、サイズに写真ファイル$photo を描画 |
new_page | new_page | 改ページ |
textbox | textbox,x,y,width,height,value[,font options] | 指定位置、サイズにテキストボックスを描画 |
multi_lines | multi_lines, x,y,dx,dy,num,sx,sy | (x,y)から、(dx,dy)方向に、毎回(sx,sy)だけ座標をずらしながらnum回線を引きます |
ymbox | ymbox,title,height,num,$value | $valueをhistoryデータとして、高さyに、年月表を作るマクロです。 |
miscbox | miscbox,title,y,height,$value | タイトル付きテキストボックスです。$valueの内容をテキストボックス内に展開します。 |
年、月、内容をともなったデータを描画する命令です。ymboxやmiscboxの内部で呼ばれます。
history, y, year_x, month_x, value_x, dy, value[,font options]
- y: 描画を始めるy座標
- year_x, month_x, value_x: それぞれ年、月、内容を書くx座標
- dy: 改行時にどれだけ下に下げるか
- value: 内容
history環境に使われるデータは以下のように指定します。
licences:
-
year: 19XX
month: 11
value: 普通自動車免許
-
year: 20XX
month: 11
value: 履歴書検定1級
year
やmonth
は省略可能です(空白になります)。
学歴、職歴を書く命令です。命令フォーマットは以下の通りです。
education_experience, y, year_x, month_x, value_x, dy, caption_x, ijo_x, [,font options]
- y: 描画を始めるy座標
- year_x, month_x, value_x: それぞれ年、月、内容を書くx座標
- dy: 改行時にどれだけ下に下げるか
- caption_x: 「学歴」や「職歴」の文字のx座標
- ijo_x: 「以上」の文字のx座標
なお、学歴データは$education
が、職歴データは$experience$
が仮定されます。
複数の線を書く命令です。履歴書によくある右上が凹んだボックスを書くために用意してあります。命令フォーマットは以下の通りです。
lines, num, x,y, dx, dy, ..., [,line options]
最初に「何個の点データがあるか」をnum
で指定します。その後、始点、次の点の相対座標・・・と続け、最後に線のオプションを指定します。なお、この命令だけのオプションとして「close」というものがあります。これを指定すると最後に線を閉じます。
「年、月、事柄」を書くマクロです。例えば
ymbox,免許・資格,204mm,4,$licences
は、「免許・資格」というタイトルの4行分の年月ボックスを、高さ204mmのところに配置する、という意味です。最後がデータのYAMLファイルの対応するレコードです。例えば、
# 免許・資格
licences:
-
year: 19XX
month: 11
value: 普通自動車免許
-
year: 20XX
month: 11
value: 履歴書検定1級
というデータだったとすると、
に展開されます。
ymbox,免許・資格,204mm,4,$licences,font_size=9
などのように、最後にフォントサイズを指定できます。
タイトル付きのテキストボックスに展開されるマクロです。例えば、
miscbox,教育歴,120mm,50mm,$teaching,font_size=12
は、「教育歴」というタイトルの高さ(height)50mmのテキストボックスを、高さ(y座標)120mmのところに配置する、という意味です。最後のフォントサイズ指定は任意です。対応するYAMLレコードは$teachingです。
例えば
# 教育歴
teaching: |
「履歴書学特論」平成15年から17年まで
「PDF出力特論」平成18年から23年まで
「スタイルファイル特別演習」平成20年から29年まで
というデータだったとすると、
に展開されます。
上記のテキスト形式で書かれたスタイルファイルは内部的にYAMLに変換されて処理されているため、スタイルファイルはYAML形式でも書くことができます。・・・が、実際やってみたら死ぬほど面倒だったので、通常はテキスト形式で書くことになろうかと思います。テキスト形式のスタイルファイルはtxt2yaml.rb
でYAML形式に変換できます。
例えば
string,5mm,247mm,履 歴 書,font_size=14,font_face=gothic
string,110mm,245mm,$date,font_size=9
をtxt2yaml.rb
に食わせると、
---
- type: string
x: 5mm
y: 247mm
value: 履 歴 書
font_size: '14'
font_face: gothic
- type: string
x: 110mm
y: 245mm
value: "$date"
font_size: '9'
が出力されます。同様にYAMLで書かれたスタイルファイルはyaml2txt.rb
でテキスト形式に変換できます。
このスクリプトは、PruneMazuiさんのresume-makerに影響されて開発したものです。
- 2023年6月29日 Ruby 3.1 以上に対応(Thanks fabon-f)、IPAフォントを同封するように修正
- 2018年7月30日 ymboxマクロ及びmiscboxマクロを追加
- 2018年6月6日 リリース
- このスクリプトはMITライセンスに従います
- 同封のIPAフォントはIPAフォントライセンスv1.0に従って再配布しています