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1000
■序章 おばけなんて ないさ
おばけなんて うそさ
ねぼけたひとが
みまちがえたのさ
だけどちょっと だけどちょっと
ぼくだって こわいな
おばけなんて ないさ
おばけなんて うそさ
子供の頃聴いていた歌が頭の中でくりかえされている。
いや、だれかがうたっているのか、そのこえが聞こえてくるのだ。
歌っているのは誰なんだ。
ぼやけた意識の向こう側でだんだんとその声が大きくなっていく
ほんとに おばけが
でてきたら どうしよう
れいぞうこに いれて
カチカチに しちゃおう
<そうだ、カチカチにするのが先だ、そのために俺はここにいるはずじゃなかったのか?>
眼の前で揺れているゴーストたちは、たしかに実体を持っている。
それはAR空間に転写されたイメージではなく、ARゴーグル越しに見える画像でもなかった。
物質化してエネルギーや質量を持った確かな存在として、そこにあった。
21世紀の三分の一が終わろうとしているこのときに、霊とかそういうオカルト的なものが解析されている。
「心霊ハッカーの腕の見せ所ね」
口元に僅かな笑みを浮かべた彼女はそうつぶやいてなにか詠唱を行う。
「心霊ハッカー・・・、」
悪い冗談だと思っていたが、それは冗談でもなんでもなく確かな現実として今目の前の現象を捉えなければならない。
そして、奴らを凍らせなくてはならない、そのために俺と彼女はこの場所にいるんじゃなかったのか。
俺は息を整える、ゆっくりと呼吸をする。
汗が背中をぐっしょりと濡らし、その濡れたシャツには、赤い血が滲んでいる。
背中だけでなく、足や腕、アチラコチラが傷ついて、気が遠くなってきた。
「本当にやれるのか?」
おれはその歌を歌っている人間に確認する。
「彼らは、電子的なプログラムで作られた、というよりは、身体を得た意思だから、アンチウイルスのプログラムで停止させたり消去したりすることができるの
幽霊の正体見たり枯れ尾花ってね。
昔の人は上手く言ったものだわ。」
そう言って女は、いや少女は笑みを浮かべた。
「おれにできることはあるのか?」
「そうね、今の所はない。
あなたは十分に自分の役目を勤め上げたと言える。
ここからは私に任せて。
彼らをしっかり消し去ってみせる。
そのためにここにいるのだから。」
キラキラと輝く銀色のチャフが、まだそこら中に舞っている。
これはオカルトなのか、ホラーなのかそれともSFな世界の出来事なのか自分でも掴みそこねている。
天井から崩れ落ちてきた瓦礫が足場を悪くしている。
少女は、それを全く気にすることなく歩き進んでいく。
ゆっくりと深呼吸しているように、いや息をしていないようにも見える。
今から見せられうことは、単なるオカルト的な心霊現象ではない。
科学的に裏付けされたコマンド入力にしかすぎない。
呪文の詠唱ににた音声入力。
コード化したプログラムをスキャンする。
20世紀の民間伝承の世界でエンターテイメントの世界で映画の中でいろいろな物語の演出で見られた状況とほとんど変わらない。
そこでは護符とか御札とかお守りとか、そういう名前で呼ばれた法具に似せたオブジェクトだ。
「収斂進化」という言葉がある。
複数の異なる生物が同様の生体的地位についたときに、系統にかかわらず、身体的特徴が似通った形状に進化する減少のことだ。
ゴーストと呼ばれる現象は高次のネットワークプログラムやシステムのバグでしかない。
けれどもその姿を人間が認識するときに、これまで言われていたり、考えられてきた幽霊や化物の姿に近いのも収斂進化の一つだし、そのバグプログに対するワクチンオブジェクトの形状が何故か、そういう法具の形状に似てしまった。
ただその時代の霊魂とか霊障とかとははっきり違うと言える。
そういうものはすべてプログラムの一部なのだ、一種のバグとも言えるし、偶然作られたバグの一種なのかもしれない。
それともプログラムの仕様なのか、それともどこかの誰かが明確な意思、悪意をもって制作したものなのかは俺にはわからないし、今はそんんあことはどうでもいい。
今はただ、目の前で繰り広げられる除霊(デバック)を実行するだけだ
■2058年12月24日、
除霊、退魔。お祓い、そういうものが電子化された世界でプログラムとしてプログラムの霊を除霊する。
上書き、更新、消去、まぁ呼び方はなんでもいい。
「甲村の仇がやっとうてる」
それが今の自分にとって大事なことだ、
SIDを通して認知できる世界はどこまでがバーチャルでどこからがリアルののか曖昧な世界。
曖昧というか混合されている
。
そういう世界に俺たちは生きている。
今なら、はっきりと分かる。
霊魂とかユーレイとか、おばけとか、そういうのはすべてプログラムなのだ。
作ったのが人間なのかそうでないのかは、今は問題ではない。
■ TCT/IPが生まれてちょうど100年。
1982年 TCP/IPが標準化された年をインターネットが生まれた日とするならば、ちょうど今年で100年が過ぎたことになる、
100年も前のことだからそのころのことは正直良くわからない。
どんな世界だったのかは知らないし、ネットに存在すす動画もいまは探すのが大変だったりして、あまり見ることがない。
いろいろテクニカルな問題もある。
実際に閲覧することができるデータは言うほど多くはないのだ。
データがあってもそれを再生するソフトやハードが存在しない。
意識的にデータのアップデートをしなければ古い資産から消えてく。
きえるというか、見ることができない状態になっていく、アプリケーションが違うと読み込みができなくなる。
よくあることだよね。
人間関係もおなじようなところがあるのかもしれない。
脳の中になるものをダラダラと流しだすのもそう悪くはないのかもしれない。
■2026年に登場したデバイス。通称S.I.D.
台湾の技術者マイケル・ウォンがある入力デバイスとプログラムを開発した。
スクライバル・インプット・デバイス(Scribble.Input.Device)
通称『S.I.D』である。
思考するだけで文字を入力することができた。
脳波と同期するその機械ははじめ、コンピューターに
入力するだけの装置として世に現れた。
最初は文字入力しかできないプログラムだった。
しかし、オープンソースのフリーウエアだったためか、瞬く間にデバッ
グとアップデートが行われ強力なものになっていった。
わずか2年の間に、音声イメージや画像イメージ、思い浮かべた映像や動
画、全ての入力が可能となった。
そして、2028年11月24日、一人のプログラム製作者が
画期的とも言える機能強化を行った。
彼は考えた、脳の中で考えたことを出力できるなら、
脳の中に情報を入力できるはずだと。
一見可能そうだが不可能といわれたそのプログラムと
入力デバイスを彼は作り上げた。
その翌年、人間の体内に直接SIDを組み込む会社が
誕生した。
その企業名は『SID.COM』(シドコム)。
西暦2029年1月1日、この日を境に世界は大きく変わっていく。
2022年のことだった。
アメリカ合衆国で核物質を利用した大規模なテロが起きた。
アメリカ合衆国の五つの都市で同時に核爆弾が爆発したのだ。
ニューヨーク、ワシントンDC、シカゴ、フェニックス、そしてサンフランシスコ
被害者総数は20万人を超えアメリカは戒厳令下に置かれた。
二期目の大統領期を終えようとしたその前の年、彼は戒厳令非常事態宣言。
事実上アメリカは戦争状態にあると宣言し、
そこからはもう滅茶苦茶だった。
実際、テロとの戦争というよりも内戦状態にアメリカは陥ってしまう。
3年と2ヶ月後アメリカは事実上の分裂状態に陥った。
何を血迷ったか、その大統領は最初の公約通り国境に壁を作ると宣言
実際に44マイルほどの国境線を壁で覆った。
公約と違うのはメキシコとの国境線で東と西を分断する壁グレート・ウォールの建設はわずか170日で完成した。
高さは3メートル
決して高くはない。
アメリカは3つに分離独立した
西アメリカ、中央アメリカ共和国、東アメリカ民主合衆国
SIDはそういう時代の世界に一役買ったのだ。
アメリカはおいていかれた経済にも
世界の流通にも時代のあれこれ
GDPは当然中国だったが、時を同じくして中国も二つに分裂してしまった
一党独裁はなかなかうまくいかないし、時代に合わないものとなっていった。
中国はもっとややこしくて今の所14カ国というか自治区に分離独立している。
それぞれの地域で使用できる電子マネーが実質上の国家というか国境を形作っていた。
問題はその14カ国の中に日本が含まれているということだ。
正式には中国でもなんでもないのだが、日本は
ヨーロッパの国々から見ればやはり中国と区別がついていないのだということかな
それhあよくある皮肉になる。
そういう時代に俺は学生時代を過ごしていた...。
学生の頃はどんなふうに過ごしていたかとかは別の話なのでここでは書かかない。
■2058年8月16日 四王寺高等学院 女子寮
(学院内の文章は基本的に一人称で勧めていく)
ネットワーク化が進んだ現在でも教師の仕事は前世紀とあまり変わっていない。
ただ少子化の影響もあって、学生数は最盛期の三分の一程度に減少していた。
私が受け持っているクラスの全部で14人。
あとの二組は15人ずつになっている。
四王寺高等学院の学校の理念は設立された180年前と同じままだ。
すなわち「友愛と博愛、ともに生きる地域と地球」
清廉潔白であれ、美しい所作であれ、そういう求められるイメージはこの何百年も変わらなかったし、これから先何百年も同じままだろう。
ARを利用した授業や電子テキストを利用するなど、今やネットさえあれば勉強は十分にできるし、教育の義務は学校に頼る必要はなくなってきた。
それでも対面で経験したりい質問をしたり、そういう「人と人とのコミュニケーション」は今でも十分に必要だし、対面でのコミュニケーションやラーニングはやはり効果があるのだ。
学校で行うのは授業というよりは確認作業にちかいのかもしれない。
同じ課題を見つけたり、チームで問題に取り組んだりとか、そういう一つ一つを有機的に結びつけて解決策を考えていくような、そういう「場」としての機能が学校教育の求められているところなのである。
その男は「霊媒師」または「肩書は「除霊師」と名乗った。
小暮幻斎、怪しい怪しすぎるしなんと言っても胡散臭い。
この21世紀の今、心霊現象とかなんとかいうのもどうかと思うが、「心霊ハッキング」「心霊ハッカー」ってなんだよ
意味がわからん。
だと自分のことをそう名乗っている、男は
中学校の校長室応接セットに座っていた。
眼の前に机があり、そこに帯付きにの新札の束が20個積み上がっている。
MRイメージではなく、ゲンキン、キャッシュだ。
紙のお金、紙幣、リアルマネー。現在では一般的にほぼ流通することはない。
これだけの現金を見るのは久々というよりも初めてだ。
俺はそういう世界の住人だからね。そういう顔をしながら
俺は、その札束を一つ一つ手に取り、パラパラとめくりながら偽札ではないかどうか確認していく。
スキャンしながら
確認が済んだ札束を一つずつバッグに入れていく。
っ全部で十個の札束を入れてその男は言った
「ありがとうございます。確かに前金1000万円いただきました。早速仕事に取り掛かります。」
「被害者の女生徒の名前は、進藤ユカノ。当中学校の二年生になります。」
校長はバツの悪そうな表情を浮かべながらその男に説明する。
できるだけ問題を大きくしたくない、そばで見ている自分にもその気持が伝わってくる。
都内でも進学校である四王寺山高校にとって、このような問題は表に出したくないことだ。
少子化による教育改革は学校そのもののあり方を大きく変えた。2023年に1年間に生まれる子どもの数が初めて50万人を下回り、一箇所に集めて格差のない教育を行うことが難しくなってきた。
また価値観の多様性や、カリキュラムのミスマッチなど教育そのものがどのレベルまで行うべきかの議論も分かれるところだった。
バーチャルな空間で行う授業が取り入れられて6年が過ぎた。
もちろんSIDのシステムが後押しした部分もある。
SID化していない児童は2000人に一人の割合となり、事実上それはいないものとして対処してもほぼ問題がなかった。
進藤ユカノは教室で、友人とコックリさんをしていて、霊障を患った
なにかに取り憑かれたようになって、規制を上げたり突然意識を失ったり意味不明の言葉を話したりし始めた。
友人たちは それが狐狗狸さん、すなわち霊障であるとか、ある種の心霊現象、あるいは呪いだと、
集団ヒステリーになってニュース沙汰になることも多い。
全寮制のこの学校の寮。
ベッドの上で進藤ユカノは静かな寝息を立てていた。
部屋は女の子の部屋だな。ぬいぐるみとかなにがアイドルのポスターが何枚も壁一面にびっしりと貼り付けられている。
「さっそく仕事に入りますか」
「こんにちはコックリさん、そろそろお帰りになりませんか?」
進藤ユカノの呼吸が次第に荒くなっていく
、「ここはあなたのいるべき場所ではない」
「こり、か、まんと、せつ、び、しん、げ、ばく」
除霊のための呪文を唱えている。
「こり、さ、すい、もう、けい、ちょ、げ、ばく」
「こり、む、すい、せい、とう、き、しゅ、ばく」
少女は目を閉じたまま、ゆっくりと不自然な動作で起き上がり、ブツブツと何かを喋っているなにを話しているのか。
「こり、か、まんと、せつ、び、しん、げ、ばく」
「進藤さん、大丈夫?」
恐る恐る私は聴いてみた。
少女の目が大きく開き、動向の開いた充血した赤い目だ
「あま、おま、おまえ、カエレ」
少女の声ではない、野太いかすれた年配の男性の、動物のようなガラガラの声。
不自然に曲がったクビ。
部屋においているぬいぐるみや小物がカタカタと揺れ始める。
「かえれー」
少女が叫ぶと同時に
それらが中に浮かび、その男に向かって行く。
男は身じろぎ一つせず。自分の額に二本の指を立て、
「臨兵闘者皆陣裂在前」と唱えながら九字を切る。
それと同時にまばゆい光が部屋全体をつつみ、化物の悲鳴に似た叫び声がこだまする
何もなかったように平穏になった部屋に静寂が戻る。
「終わりました」
男は冷静な口調で
「え、もう?」
私は素っ頓狂な声を出してしまい。
「あれ、先生どうしたの?」
進藤がそういう。以前と変わらない普通の女生徒の笑顔がある。。
なんD,こんなに簡単に済むのだったらもっと早く頼んでおけばよかった。
「残りの8000万円は、明日集金に来ます。
今日と同じ様に紙幣(リアルマネー)でお願いします。
新札である必要はありません。とにかく、ビットでも振込でもなくあくまで紙幣でお願いします。」
このての商売の支払いが、たいてい現金なのは理由があった。
早く言ってしまえば足がつかないのだ。
■恋人とかあの人が好きとか
性別はそれほど重要な意味を持たなくなった。
好きだったら付き合うし、そうじゃなかったら分かれる。
男とオンナの立場の違いとか。
今、世の中で一番流通しているのは、日本円だった。
次に流通しているのはユーロ。
ドルの価値は、13年前のアメリカ分離戦争以後、下がりまくって、いまはほぼないと言っていい
ビットマネーがほぼ一番流通している。
実際に貨幣を使う機会は殆どない。
それなのに、なぜゲンキンが未だに流通しているのかと言うと、それが一番。
資金洗浄するために現金を使う。
政府はその片棒を担っているといえる。
皮肉だね
実際には、国家は税収によって成り立ち、自国の通貨を利用して租税を得る。
国家は貨幣そのものだと言える。
そしてこの貨幣システムのデータの書き換えが政府の税金の源泉になっていた。
貨幣が貨幣であるための信用を担保する。
それが国家という幻想の現実なのだ。
電子マネーは、信用情報や各プライバシーと強く結びついている、その使用履歴支払履歴はこと細かく記録されいつどこで何に使ったか一目瞭然、検索可能。
そうなって来ると、いわゆる、アングラなあまり知られたくない支払いを、可能にする、
その信頼性もなければなければならない。
そこで必要になるのはゲンキンだ。
両替屋、で電子マネーに換金する。
食堂や小売店で現金使えるには使えるが、使うたびに個人情報を引き出される。
その現金をだれが使ったかをいちいちゼロから記録しなおすからだ。
手数料はピンきり手数料無料から、上はピンきりだ。
両替屋は、
「手数料はいつもの通り20%」
20%が高いかどうかは判断にまかせる。。。。。
無料に電子マネーに変換することだってできる。
だがその場合いろいろな質問事項に答えなければならない
いつどこで
誰からの収入を得たのか、どういう支払い内容7日履歴をきちんと辿れなければならないし、高額な入金をする場合は、相手の証明書だの同意書だの、様々な書類が必要になってくる。
そうなると自分にとっても支払手にとっても都合の悪いことがいろいろ出てくる。
ここの電子マネーに両替するのは、そういう一切合切の手続きが不必要なのだ。
「あんたも景気がいいね」
「あんたもね」
いつもと同じような会話を繰り返す。
札束がスキャナーに吸い込まれていく。
数字が上がり、自分の口座に即座に8000万クレジットの残高が増える。
「毎度」
完了した。
あんたも悪い男だねっl
今回のコックリさんの関係する事件は珍しいことではない、
あの校長に語った話は本当のことだ、
14歳のときに多発するのもちゃんとした理由がある。
日本では法的にsidの装着をしていいのは14歳からとされている
健康上の理由。
成長期の子供が装着したばいい、明確に視覚以上、斜視になったり、立体視が困難になるエビデンスがある。
14歳でもなるリスクがないというわけではないが、18歳未満。
生体SIDの
SIDグラスの着用率を合わせるとほぼ100%の人間がSIDシステムを利用して同期した世界に生きている。
この俺もそうだ。
先日、あの学校にいた先生、校長生徒、全員がSIDをのネットワークに常時接続されている。
バーチャルな世界に生きている。
けれどもそれは普通のことなのだ、
バーチャルとは仮想という意味ではなく「事実上の」という意味バーチャルリアリティを「仮想現実」なんて捉えている日本人は、2036年現在どこにもいない。
■すべての心霊現象はプログラムのバグでしかない。
SIDシステムもよくできたOSではあるが、それでも人が作ったものだから完璧だとは言えないし、いろいろバグだって出るし、よくいうコンピューターウイルスにだって感染する。
先日の事件はそういう、コックリさんにも話がついている、
どこかの人間が作った悪質なコンピューたーウイルスに感染しただけに過ぎない。
除霊なんていっってたけれども、自分がしたことはそれに高速でパッチを当てていただけだ。
片っ端から量」でとにかくワクチンソフトをインストール上書きしている
高度に発達した科学は魔法と区別できない。
20世紀の小説だったかマンガだったか、の文章だ。
俺がやっていることも他者から見ればオカルトにしか見えないだろうけど実際は高速にハッキングしたり言語を書き換えたり
それこそパッチを当てているだけ、
中学生がコックリに憑依したというのは、実は悪いプログラムに感染しただけに過ぎない。
言語によるコマンド入力画像、AR空間での上書き、MR空間での上書き、
思考しただけのプログラミングを組み上書き上げるのも今の時代では普通のことだ。
じゃぁ、世の中はプログラマーだらけなのかというと、そういうことは決してない。
ただ21世紀のはじめよりは数が増えたが、それでもプログラマーは日本全体の3%にも満たないのではないだろうか、
おれのようなハッキングやプログラミングだけで食ってる人間はもっと少ない。
だからこそ商売になる。
依頼、
「ジジ、おはよう。」
「おはよう、」
■ジジは黒猫を模した俺のファミリアだ。
ファミリアとはAIアシスタントのことで、
AIアシスタントにはいろいろな姿を持つものがある、
人形もあるけれども動物タイプや架空のキャラクターのような姿かたちをしたものもある。
姿を持たない音声だけのタイプもあるし、逆にテキストだけのタイプもある。
好き勝手に選べるのがいいところだと思う。
電脳アシスタントとか、電脳ペット、電脳使い魔、サイバーエージェント、電脳式神、とかそういういろいろな相性がある。
ファミリア(Familiar)が今の所一番多数だ。
「今日はメールあるかい」
「326通のメールを確認してるよ。
そのうち312通は識別コード99999だからセールスとか広告メールだね、削除する?」
「ああ、削除しておいて、残りはタイトルを見せて」
DMは認められてはいるものの、シドコムのサービスとして、やり取りされるメールのうち、ジャンクメール、いわゆるダイレクトメールには必ず識別コードをくっつけないといけない決まりになってる。
もしつけてなかったら、IDを即座に抹消され以後2年間ネットに接続できなくなるからだ。
とは言っても実際はIDは裏で金銭取引されているから、あんまし意味は無いのだが。
少なくとも個人識別が可能なので、SIDを使ったアクセスはできない。(もっともキータッチ式の端末からはアクセスできる)
この時代、生体SIDを利用している人間の脳には一つ一つIPアドレスが振られていると考えたほうがわかりやすいかも知れない。
「件名を表示するよ」。
>1『あなたにお知らせがあります』
>2『あなたをリッチにさせるいくつかの方法。』
>3『満足していますか?』
>4『宗教ではありません』
>5『メールアドレスが消えてしまいました。』
>6『私の秘密を見てください』
>7『私の秘密を見てください。』
>8『お久しぶりです。』
>9『件名なし』
>10『ディアムより、』
>11『12月22日の件』
>12『驚いた!』
>13『25684XXX』
>14『件名なし』
>15『件名なし』
1から9までは削除していい。あと、12と14.15もいらない。多分削除で問題ない。
紐付きのメールはないだろ?
ないねぇ。
13番は仕事の依頼だったから、ある程度話を進めておいたよ。
先方からアバターメッセージが来ているけど見るかい?
そういってジジがニヤリと笑う。
黒猫が笑う、ちょっと妙な気分だ。
「あとでいいや、とりあえディアムからの返事を、」
「わかった」ジジがそう返事するのと同時に目の前のソファーにディアムの姿が現れる
アオイ瞳、190センチはある身長。
スマートで贅肉のない若々しい青年の姿。
まぁ実物のあいつは40すぎの脂ぎったふとっしょなんだが、とりあえず、ネットの慣習にならって「アバター」と呼ばれるイメージは未だに現役の呼称だった。
「支払いはビットマネーでいいか?」
編集されたディアムが爽やかな笑顔で話す。
もとのメッセージは30分以上あるがジジが要点をまとめて結局必要な部分だけ抽出してくれてる。
俺は単純にテキストで返事を返す。
「あぁそれでも構わんよ」
13番のメールは仕事の絵依頼だ。
ジジがつけたコード
25684XXXは捜索依頼を表す。
レベルがXXXということは違法性が高くなる可能性がある。
ジジは優秀なファミリアだから、スパムやいたずら、詐欺メールの確率の高いメッセージはほぼ間違いなく弾いてくれる。
もとのメッセージは6分23秒、けっこう短い。
同じようにジジが編集した動画が目の前で、再生される。
女の子の姿が現れる。
見覚えのある制服だ。夏にコックリさんを除霊したあの中学校の制服。
「依頼があります。場所は、新宿にあるビートハウス『庵腐裸愚努(アンプラグド)』11月25日19:00にて会
>いたし』
無味乾燥な音声だ。人工音声。このアバターは多分別人のもの、もしくは全くの作り物のキャラクター。
返信
「了解した。前金で1万ユーロ。当日現金でもいいし、情報管理を気にしないなら電子マネーでもなんでも構わないから指定の口座に振り込んでほしい。正式な依頼、金額の確認はその時に」
ジジが答える
「返信したよ」
年が明けて依頼が来る。
去年の暮に除霊師た女生徒の友人だと
アバターではわからない、
性別も見た目もたいてい違うし、性別がちがうことだってよくある、というkあほとんどがそうだ。
実際に依頼を受けるかどうかは本人にあって決める
起動するのは除霊用のプログラム いろいろなプロトコルに従って記述された御札やパッチ
プログラムを護符のようにしたり、3dのarアイテムにしたものだ。
■フォトショップ
少女の名前、田島佳純といった。
予想と違って彼女はメッセージのアバターと全く同じ姿だった。
普通は、自分に依頼がある場合は、たいていプライベートな部分を隠すから、メッセージアバターが本人と同じってことはほぼなかった。
そういうところは、子供独自の危機感のなさや、セキュリティー意識の低さから来ているのかもしれない。
または、自分に対する危険さを理解していないとか
「ともだちが、電子ドラッグにハマっているの。」
切り出された話題は、危険がまったくないとはとても言えない依頼。
正直何を考えているのかわからない。
「どうやって知ったんだい?」
俺は質問をする。
彼女は答える。
夏の事件で除霊を受けた女の子と友人関係にあったこと。
彼女の症状が自分が思っていたよりも遥かによくなっていたこと。
ネットで自分のことをいろいろリサーチしてみたこと。
##リサーチしたところも場面変換してテキストにする。
##順序を入れ替える
「あなたはなんとなく信頼できそうだし、腕も確かだと思った。」
「電子ドラッグの入手先はどこ」
「普通に路上で、」
「繁華街に売人はたいていいる」
「支払いは現金」
友人がハマっている電子ドラッグはフォトショップ。
SIDにインストールすることで、世界が色めきハイな気分になれる、使用感は多少個人差があるが、そんなに重くはない。
効果の持続も30分からせいぜい長くても半年。
SIDはセキュリティーやコアな部分はオープンソースになっている、
いろいろなプログラマーがよってたかって改良している。
正式版と、ハックされたバージョンが両方存在している。
電子ドラッグはハックされたSIDのOSから作り出されたプログラムで本来はSIDによってその使用は禁止されている。
けれども抜け道があるのはいつの時代にも共通。
「まぁ除霊も除菌も解毒も似たようなものだから」
ジジが笑いながら答える。
佳純は一瞬ビックリしながら
「この黒猫はあなたの電脳ペット?」と質問してきた。
「そうですよ。電脳ペットではなく「ファミリア」って自分たちは呼んでますけど。」
「似たようなものです、いわゆる動物タイプのAIアシスタントですね」
「君はファミリアは持ってるの?」
「いますよ、見ますか?」
「ちょっと見てみたいね」
「ブラッド、エンボディ、パブリック」
青い目の西洋人がソファーに現れる、どこかで見たことのある人物
「ブラッドって血のこと?」
「違うわ、ブラッド・ピット。昔の俳優さん.トゥルー・ロマンスって言う映画がすgク良かったの。
つるーロマンスっていったらクリスチャン・スレーターじゃないの?
「あれ、ご存知なんですねあんな古い映画。」
しばらく映画の会話を続ける。
クリスチャン・スレーターの顔は好みではないとか、
映画のキャラそのもののブラッド・ピットが挨拶する。
はじめまして、ミスター小暮。私の名前はブラッド・ピートです。ブラピとお呼びください。」
なんだか、おかしいなと思う、彼はこういうキャラクターだったろうか?
まぁ自分だって本人にあったことはないし、俳優本人はもう何年も前になくなっていた。
■依頼内容
実際に人が死んでしまっている事件がそのあとも起きた。
夢を見るという。
「それはどんな夢ですか?」
ドラッグの後遺症かもしれない。
プログラムに不具合が生じている、
「SIDの再起動はしたの?」
「しました、何回も・・・、最初は問題がないのですけど、4-5日すると幻覚が見えるんです。
それから幻聴も。
いったい何なんでしょうか?」
ふーむ、
自分の過去の経験の中から似たようなものがないか思い出してみるまでもない。
これは仕様によるものだ。
おそらく彼女が使ったのは、正規の電子ドラッグではなく、そこら辺りのクラッカーが作ったまがい物だろうな。
SIDコムのセンターには行ったのか?
ちょっと険しい表情でコグレは尋ねる。
「行ってません」
彼女はそう答える。
予想はしていた。
とりあえず、その手のドラッグプログラムは規制されているし、ましてや未成年だ。
センターに行けば、SIDの再インストールをするときに、ログをすべてチェックされる。
未成年でアレば保護者に連絡が行く。
彼女のような真面目そうな女学生が、そんなものに手を出してるなんてことは、親にとっては怒られる対象になる。
まぁ秘密にしておかないと学校も下手すれば退学ということにもなりかねない。
その割に、振り込んだりとか、現金を使わないところはワキが甘い。
とはいえ、このくらいの年令だと、ゲンキンの現物、紙幣なんてほとんど見たことも使ったこともないだろうから、そもそも「紙幣で支払う」という発想自体がないのかもしれない。
金銭は、データセンターにログを残した数字の羅列。
「本当のことを言うと俺には霊感なんてものはない。」
「俺に霊感がないという意味じゃなくて、霊感という概念そのものがない」ということだ。
「あのときの除霊に見えたのも、実際はSIDのバグを修正しただけだ、
音声コマンドやジェスチャコマンドをいくつも組み合わせて、空間バグを修正したり、暴走するプログラムを強制的に解除しただけにしかすぎない。
「正直な人なんだね。あなたはそう思っているんだ。」
「でも、ほんとうは違う、霊は確かにいるの、存在しているのよ。」
「SIDのネットワークができて明らかになった変化が一つある」
「あれらは、実際に干渉できるだけのエネルギーを持つことができたの」
「まさか?」
「命や生命に対する考え方もだんだん、変わってきたわ」
「ジジのことはどう思う、それに私の横にあり、ブラッドは?」
「この子達はプログラムAIアシスタントだけれども、実際に命を持つものなのよ」
「まさか?」
「じゃあ、そもそも命とはなに?」
「哲学的に神学的にいろいろな答え方があるよ。宗教的にはそれぞれの信仰の種類によって違いがある」
命とは何か、こういう寓話を思い出す。
「君は風を知ってるか?」
「風は存在してる?」
「今も現に吹いていることがわかる。」
「それが見えるのか}
「見えるわけじゃない、肌に触れる空気の流れや、揺れる草木の動きから、風が確かにあるとわかる。
「みたことはあるか?」
「そういう意味では見たことがある、見ているのは風そのものではなく風が起こす現象を見て、風があるのだなとわかる。
「命もそれと同じだよ。」
「つまり現象が同じように起き続けているのなら、そこに命が存在しているということだ。
だが、本当は風というのは、存在しているわけではない、いろいろなゆらぎや変化があることで、「風」という存在を作り出していいるに過ぎない。
命も同じさ、
喉が乾くとか、お腹がすくとか、汗をかく、話す、喜ぶ、怒る、涙を流す。叫ぼうとする。
どっちが先なのかは私にはよくわからない。
ただ、命があるから、そういう現象が起きるのではなく、
そういう現象が起きるから命があるように感じるだけだ。
だから実際は「命」なんてものは存在しない。
「お金」の概念がセカンドミレニアム世代の自分とは大きく違っていて間違いがない。