著者: 5t111111
「はじめに」の章で説明したように、 Crystal はコンパイラ言語なので、プログラムのソースコードをコンパイルするためのコンパイラが必要になります。
この章ではまず、 Crystal を実際に使っていくための様々なプラットフォームでのインストール方法を紹介します。
そして、プログラムを書くために大事なエディタのサポート状況や、 Web ブラウザ上で Crystal プログラムを実行することのできる Playground というツールについても紹介します。
Crystal のインストール方法は OS ごとに異なります。ここでは、主要な Linux ディストリビューションや macOS 、そして Windows へのインストール方法を紹介します。
Debian 系のディストリビューションでは、 Crystal の公式リポジトリを利用できます。
そのために、まず APT の構成にリポジトリを追加します。以下のコマンドを実行してください。
$ curl -sSL https://dist.crystal-lang.org/apt/setup.sh | sudo bash
これによりリポジトリが構成されキーが登録されます。もし上記を自分自身で設定するのがお好みの場合は、以下を実行しても同じことができます。
$ curl -sL "https://keybase.io/crystal/pgp_keys.asc" | sudo apt-key add -
$ echo "deb https://dist.crystal-lang.org/apt crystal main" | sudo tee /etc/apt/sources.list.d/crystal.list
$ sudo apt-get update
リポジトリを構成したら以下で Crystal がインストールできます。
$ sudo apt install crystal
以下に記載するパッケージは必須ではありませんが、標準ライブラリの機能を使う上で必要となるためインストールすることを推奨します。
$ sudo apt install libssl-dev # OpenSSL に必要です
$ sudo apt install libxml2-dev # XML に必要です
$ sudo apt install libyaml-dev # YAML に必要です
$ sudo apt install libgmp-dev # Big numbers に必要です
$ sudo apt install libreadline-dev # Readline に必要です
なお、新しいバージョンの Crystal がリリースされた場合は以下でアップグレードできます。
$ sudo apt update
$ sudo apt install crystal
Red Hat 系のディストリビューションでも、 Crystal の公式リポジトリを利用できます。
まず YUM の構成にリポジトリを追加します。以下のコマンドを実行してください。
$ curl https://dist.crystal-lang.org/rpm/setup.sh | sudo bash
これでリポジトリが構成されキーが登録されますが、以下のように、同様のことを手動で行うことも可能です。
$ rpm --import https://dist.crystal-lang.org/rpm/RPM-GPG-KEY
$ cat > /etc/yum.repos.d/crystal.repo <<END
$ [crystal]
$ name = Crystal
$ baseurl = https://dist.crystal-lang.org/rpm/
$ END
リポジトリを構成したら以下で Crystal がインストールできます。
$ sudo yum install crystal
なお、新しいバージョンの Crystal がリリースされた場合は以下でアップグレードできます。
$ sudo yum update crystal
Arch Linux では、ユーザリポジトリから Crystal をインストールできます。パッケージの依存関係を管理するための shards
も必要になるので同様にインストールしてください。
$ sudo pacman -S crystal shards
Gentoo Linux では、メインの overlay に Crystal が含まれています。
以下で構成のフラグを確認できます。
# equery u dev-lang/crystal
[ Legend : U - final flag setting for installation]
[ : I - package is installed with flag ]
[ Colors : set, unset ]
* Found these USE flags for dev-lang/crystal-0.18.7:
U I
- - doc : Add extra documentation (API, Javadoc, etc). It is recommended to enable per package instead of globally
- - examples : Install examples, usually source code
+ + xml : Use the dev-libs/libxml2 library to enable Crystal xml module
+ - yaml : Use the dev-libs/libyaml library to enable Crystal yaml module
以下を実行してインストールしてください。
$ su -
# emerge -a dev-lang/crystal
macOS では、 Homebrew を利用して簡単に Crystal をインストールできます。
$ brew update
$ brew install crystal
なお、macOS で Crystal を使うときに以下のエラーに遭遇することがあります。
ld: library not found for -levent
その場合は、以下のようにコマンドラインツールを再インストールした上で、デフォルトのツールチェインを選択し直す必要があります。
$ xcode-select --install
$ xcode-select --switch /Library/Developer/CommandLineTools
Linuxbrew を使って Linux に Crystal をインストールすることもできます。
$ brew update
$ brew install crystal-lang
もし Crystal の言語自体を開発することにも興味があるのであれば、同時に LLVM もインストールしておくと良いでしょう。その場合は上記の2行目を以下に変更します。
$ brew install crystal-lang --with-llvm
残念ながら、まだ Crystal は Windows での実行をサポートしていません。ですが、 Windows Subsystem for Linux を利用することで Windows 10 上で Crystal を使うことが可能です。
WSL 上での Crystal のインストール方法は、それぞれの Linux ディストリビューションにおけるインストール方法と同様です。例えば、もし WSL に Ubuntu を導入したのであれば、前掲の「 Debian や Ubuntu 」でのインストール方法を参照してください。
ここまで、プラットフォームごとのインストール方法を説明しましたが、自分の使っている環境が対応していない場合や、より最新のバージョンを使いたい場合のインストール方法を紹介します。入門書の範囲を超えてしまうため、詳細についてはリンク先をご覧ください。
Crystal のインストールができたら、以下のコマンドを実行してみましょう。これで、Crystal がインストールされて利用できる状態かどうかが確認できます。
$ crystal -v
正常にインストールされている場合、
Crystal 0.27.2 (2019-02-05)
LLVM: 6.0.1
Default target: x86_64-apple-macosx
といったバージョン情報が表示されます。もし「コマンドが見つからない」といったエラーが表示された場合は、
-
Crystal のインストールでエラーが発生していないか
-
Crystal をインストールした場所にパスが通っているか
を確認してください。
無事にインストールして使える状態になっていたら、はじめての Crystal のプログラムを書いてみましょう。ご多分に漏れず、ここでも最初のプログラムは「 Hello world 」とします。
好きなエディタで、以下のプログラムを書いて hello.cr
として保存してください。Crystal の拡張子は .cr
です。
puts "Hello world!"
それではプログラムを実行してみましょう。
$ crystal hello.cr
実行して、
Hello world!
と表示されたら成功です!
Crystal はコンパイラ言語ですが、このように1つのコマンドでコンパイルと実行を同時に行うことができます。
$ crystal run hello.cr
と実行しても同様です。
さて、これで Crystal を書くための準備が整ったので、次の章からは文法など実際にプログラムを書くための内容に入っていきます。ですが、プログラムを快適に書くためにはエディタのサポートも欠かせません。
この章では最後に、以下の代表的なオープンソースエディタの Crystal サポートの状況について簡単に紹介します。
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Visual Studio Code
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Atom
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Vim
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Emacs
Visual Studio Code、通称 VSCode は機能の豊富さとシンプルさ軽さを両立したエディタとしてとても人気のエディタです。
VSCode で Crystal プログラミングをサポートするエクステンションにはいくつか種類がありますが、現在最も活発に開発されているのは Crystal Language というものです。GitHub 上では crystal-lang-tools/vscode-crystal-lang というリポジトリで開発されています。
この Crystal Language エクステンションをインストールするだけで、
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シンタックスハイライト
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自動インデント
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自動フォーマット
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エラー検知
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定義ジャンプ
などの機能がすぐに利用できるようになります。
vscode-crystal-lang の GitHub 上の Wiki にはより詳しい設定などの情報も記載されています。例えば、エラーの検知レベルをカスタマイズしたり、
という Crystal の Language Server との連携などのより便利に使うための設定も書かれていますので併せてご覧ください。
Note
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Crystalline は Crystal のバージョン 0.35.1 以降に対応しています。
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GitHub 社製のエディタ Atom では、以下のパッケージを導入することで快適に Crystal プログラミングができます。
language-crystal は Atom のパッケージとしては language-crystal-actual という名前で提供されているので注意が必要です。 これをインストールすると Crystal のシンタックスハイライトや自動インデントがサポートされます。
atom-ide-crystal は、前節でも触れた Language Server と連携して IDE のような機能を追加するものです。まだ機能的には充実していない面もありますが、エラー検知をサポートするなど少しずつ開発が進んでいます。
言わずと知れた Vim でも、プラグインを使うことで Crystal プログラミングにエディタのサポートを受けることができます。
rhysd/vim-crystal をインストールすると Crystal の filetype が追加され、シンタックスハイライトや自動インデントが有効になります。
また、vim-crystal には Crystal の組み込みツール crystal tool
や Spec との連携などの便利な機能があり、シームレスにプログラミングしやすくなっています。
エラー検知をしたい場合には、 vim-syntastic/syntastic などの統合解析プラグインを導入が必要です。前述の vim-crystal にはこの syntastic 用のチェッカもバンドルされているため、特別な設定をせずとも利用できます。
Emacs で Crystal のプログラムを書く場合は crystal-lang-tools/emacs-crystal-mode を使うのがよいでしょう。
このパッケージを導入するとシンタックスハイライトや自動インデントがサポートされ、定番のチェックツール flycheck にも Crystal のサポートが追加されます。
emacs-crystal-mode パッケージは MELPA に登録されているので導入も簡単です。
Crystal Playground を使うと Web ブラウザ上で Crystal のコードを実行できます。
この画像を見るとわかるように、 Playground では、
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実行結果
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型情報
などを同時に表示しながら手軽に Crystal プログラミングを楽しむことができます。
Playground は Crystal に同梱されているため、Crystal がインストールされていれば、
$ crystal play
と実行するだけで Playground サーバが立ち上がり、すぐにアクセスして使うことができます。デフォルトではポート 8080 で起動するので、お気に入りの Web ブラウザで http://localhost:8080 にアクセスしてください。ポートは -p
オプションでカスタマイズ可能です。
Playground を立ち上げておけば、本書を読み進めるときに、記載されているコードをその場で実行して試したいときにも便利に活用できることでしょう。